胃食道逆流症(GERD)による声がれ
GERDによる声がれとは
胃食道逆流症(以下GERD:Gastroesophageal reflux disease)は胃液や酸性の胃内容物が食道内へ逆流する病気です。「胸やけ」や「胃部不快感」などの症状が生じ、ひどくなると食道粘膜にただれができます(逆流性食道炎)。
GERDによる声がれ
| 図1 |
|---|
![]() |
胃液がのどまで上がってくるとヒリヒリする痛み(のどやけ)や、のどの圧迫感(のど仏の下に常に丸い玉があるような感じ)、咳などが生じるため声を出す際の障害になります。さらには声帯が直接胃酸の刺激を受けた場合には声帯自体がただれてしまい声がかれてしまいます。(図1)。
また声帯には一見明らかな異常がなくても、実際には胃酸の刺激で声帯がむくんでいたり、逆流した胃酸が声帯にまとわりついたりして声がれの原因になっていることがあります。以下のビデオはGERDによる声がれの例で、ストロボスコープという特殊な装置で声帯を観察したものです。声を出すときの声帯の振動にあわせて水しぶきのようなものがみられます。この水しぶきは逆流した胃酸であることが以下の検査(インピーダンス・pHモニタリング)で証明されています。また酸の刺激により頻繁に咳払いをしているのがみられます。(ビデオ)
| ビデオ:GERDによる声がれ |
|---|
GERDの検査
1)自覚症状の有無
GERDの代表的な症状は「胸やけ」で、それ以外に「のどの違和感」や「げっぷ」などがあります。最近ではこれらの症状をまとめた問診表が用いられています。 代表的なものには群馬大学のKusano先生らが開発したFスケール問診表があります。合計点数が8点以上だと逆流性食道炎の可能性が高くなります。声がれや声の出しにくい感じがある方で、Fスケールで8点以上の方は声がれの原因としてGERDが関与しているかもしれません。心配な方はチェックしてみましょう。(クリックしてエーザイのHPへ)http://www.gyakusyoku.jp/condition/f-scale.html
2)インピーダンス・pHモニタリング
胸やけなどの症状の有無はGERDの診断にとって有用ですが、胸やけがあったからといってそれが声がれや、のどの違和感の原因とは断定できません。確実な診断のためには胃酸がのどまで逆流していることを客観的に照明する必要があります。このために、現在最も有用な検査がインピーダンス・pHモニタリングです。咽頭や食道内のpHは通常ほぼ中性ですが、胃酸は強い酸なので、これが食道・咽頭まで逆流すると咽頭・食道内のpHが一過性に酸性になります。この変化をみる検査がpHモニタリングです。さらに逆流により生じる食道・咽頭の電気抵抗(インピーダンス)の変化をみることで、逆流しているものの性状(液状のものか、固形物か、げっぷなどの空気か?)を判定することができます。
この検査は、食道や胃を専門とする消化器内科や外科でも極めて限られた施設でしか行えません。耳鼻咽喉科では当院を含め全国で2施設のみです(2010年1月現在)。 当施設ではこの分野で極めて高性能の機器を数多く手がけているスターメディカル社と咽頭用の特製カテーテルを共同開発し診断に用いています。手のひらサイズの小さな携帯用機器(図2)なので、24時間通した検査が外来通院で可能です。
GERDの治療
声がれや、声の出しづらい感じの原因としてGERDが考えられた場合、GERDに対する治療を行います。以下のような治療があります。
1)生活習慣の見直し
暴飲暴食をしない、食べてすぐ横にならない、就寝3時間前以降には食事をしない、腹圧を上げる服装(コルセットなど)や運動(特に食後)を避けるなどがあります。甘いものやコーヒー、高脂肪食などを取り過ぎないように注意しましょう。
2)薬物治療
①プロトンポンプ阻害薬(PPI)
胃酸の分泌を抑える薬です。現在使用されているGERDや胃潰瘍の治療薬の中でもっとも効果のある薬剤で、逆流性食道炎に対し8週間投与で治癒率約90%という高い効果を誇っています。わが国ではランソプラゾール(商品名タケプロン:武田製薬)やラベプラゾール(商品名パリエット:エーザイ)などがあります。
②消化管運動改善薬
③唾液分泌促進薬
唾液は酸性の胃酸を中和させる作用があります。何らかの原因、たとえば加齢やシェーグレン症候群などの膠原病の一部、薬の副作用などにより唾液の量が減っている場合、GERDの症状は悪化することがわかっています。また唾液には口腔内や咽頭の粘膜を保護したり、ウイルスなどに抵抗したりする免疫を含んでいるため唾液の減少は胃酸に対する咽頭の抵抗力を弱めます。
唾液の分泌を促進する薬には塩酸ピロカルピン(商品名サラジェン:キッセイ薬品)などがあります。






