反回神経麻痺 (声帯麻痺、喉頭麻痺)
反回神経麻痺 (声帯麻痺、喉頭麻痺)とは
声帯は気管の入り口にある門のようなもので、息を吸うときは肺に空気を入れるために開き、声を出すときは閉じて振動します。(図)
反回神経麻痺(声帯麻痺、喉頭麻痺)で声がかれるのは、麻痺した声帯が開いた状態で動かなくなってしまうためです。麻痺した声帯が、声を出すときと同じように正中で止まっている場合には声は悪くなりません。現在の医学では、麻痺した声帯を再び動くようにすることは出来ませんが、開いた声帯を、声を出すときと同じ位置に移動させる手術(正中移動術)を行うと、声が出るようになります。この治療にはいくつかの方法があります。現在行われている主なものは 1、声帯内注入術 2、甲状軟骨形成術1型
3、披裂軟骨内転術の3つです。
3つの手術すべてが可能ですがそれぞれに長所短所があります。
以下にその方法を解説します。
声帯内注入術
麻痺した声帯の外側に、物質を注入することにより声帯を正中移動させる方法です。
注入物質には以前はシリコンが使われていましたが、現在では主に脂肪が使われます。頚部の切開が不要で簡便なため、わが国ではもっともポピュラーな方法です。しかしながら全身麻酔で行われるため、手術中に患者様の声を聞きながら注入量を調節できないこと、また、脂肪は術後しばらくしてある程度吸収されるため、効果が確実でないことが欠点です。また過剰に注入しすぎたり、声帯の粘膜直下に注入されたりした場合、声は悪化する危険があります。
この場合以前の声より悪くなることがあり、修復が難しくなります。
甲状軟骨形成術1型
喉頭の軟骨(のど仏の軟骨です)に穴を開け、そこから麻痺した声帯を人工物質(最近はゴアテックスが世界的に用いられています)で押して正中移動させる方法です。
頚部の外切開が必要ですが、局所麻酔で行うため、患者様の声を聞きながらもっとも良い声の出る位置で調節することが出来ます。 声帯に直接触れないため、手術前より声が悪化することは無く、仮にそうなったとしても、人工物質を除去することで元の状態に戻すことが出来る「可逆的な」手術です。
手術は簡便で、1時間~1時間半ほどです。高齢者や体力が低下気味の方でも可能です。
披裂軟骨内転術
人間が声を出すときには、披裂軟骨が内転することにより声帯が正中に移動します(図4)。
この手術は実際と同じ声帯の内転を再現するもので、もっとも理にかなった手術です。声帯は、ギターやバイオリンの弦と同じで、「ピン」と張った状態でもっとも良い声がでるとわれわれは考えています。図2,3を見るとわかるように1,2、の手術は「ゆるんだ弦を」外側から押しているだけですが、この手術は声帯の張力を生理的に再現することが出来ます。この手術と2の手術を同時に行うことで声は非常に良くなり、当院では多くの患者様が正常な声に戻っています(ビデオ1、2)。
| ビデオ1:術前喉頭所見 | ビデオ2:術後喉頭所見 |
|---|---|
欧米では2の手術とこの手術を併用することが一般的に行われていますが、わが国では両者を一期的に併用している施設は当院を含めて数施設しかないようです。2と同様、局所麻酔で行われ、手術時間もその分長くなりますが、当院では、麻酔科医の協力で、患者様の負担を軽減する特別な麻酔を用いて手術を行っています。






